会社破産申立時に提出した以外の資料の保管をどうすべきか?

破産をする会社の資料の保管について、どうするべきなのでしょうか。

破産をする場合には事業を廃止することから、今後使用することがないであろう資料が沢山あり、それらの処分を早めにしたいと思う法人代表者の方もいるかもしれません。

しかし、破産申立時に裁判所に提出する資料以外の書類等について、法人代表者が判断して廃棄処分をしてもよいものなのでしょうか。

今回は、まず、申立人(破産会社)や申立代理人(申立人が破産手続を依頼した弁護士)が裁判所や破産管財人に対する情報提供を説明し、それを前提に資料の保管をどうするべきかについて説明していくことにしましょう。

1.裁判所に対する情報提供

(1)資料提出

裁判所は、「破産手続開始の申立てをした者・・・に対し、破産手続開始の申立書及びその添付資料以外で、・・・、財産の状況に関する・・・必要な資料の提出を求めることができる」としています。

これは、法人代表者などは、会社の資産や負債について把握していることが通常で、破産手続をスムーズに行なうために必要な情報を知っていることが多いと考えられるため、裁判所が法人の代表者に必要な資料を提出させることができるようするため定められています。

ここでいう、財産の状況に関する必要な資料とは、会社の財産の価額や管理状況、担保の状況等に関する資料などが考えられます。

これらの資料は、裁判所に納める必要のある予納金額の決定や、財産状況を報告する集会の日程を決めるために必要となります。

(2)重要財産開示義務

また、申立人は、「破産手続開始の決定後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならない」とされています。

なお、この義務に違反した場合には、破産犯罪として処罰されるおそれがあります。

また、個人については、せっかく破産手続を進めたにもかかわらず借金が帳消しにならないこともあり得るので御注意ください。

2.破産管財人に対する情報提供

(1)破産管財人に対する資料提出又は情報提供等

破産管財人とは、破産会社の財産を管理、調査、換価する仕事をする裁判所から選ばれた弁護士のことをいいます。

この破産管財人は、「破産手続開始の申立てをした者に対し、・・・財産の状況に関する資料の提出または情報の提供その他破産手続の円滑な進行のために必要な協力を求めることができる」とされています。

これは、法人代表者などは、会社の資産や負債について把握していることが通常で、破産手続のスムーズな進行に役立つ有益な情報または資料を把握・収集していることが多いため、そのような資料または情報を法人代表者などに提供させて、財産の管理・調査・換価のスムーズな遂行に活用するようにするために定められています。

(2)破産管財人に対する説明義務

「破産者、その代理人、法人の役員等及び従業員は、破産管財人・・・の求めに応じて、破産に関して必要な説明をしなければなりません。」とされています。

これは、破産する会社の財産の内容、所在、破産に至った経緯などに関する情報を提供させて、破産管財人の管財事務遂行の資料とし、また債権者が管財事務に対する監督を行なうための資料を提供させるために定められているとされています。

なお、この説明義務に違反すると破産犯罪となり処罰されるおそれがあります。

また、個人については、せっかく破産手続をしたにもかかわらず借金が帳消しにならないこともあり得るのでご注意ください。

3.資料の保管

申立代理人は、債権者と申立人といった破産関係者との利害を適切に調整しなくてはいけないと考えられています。

そのために、法人の代表者なども申立人代理人と同様、裁判所や破産管財人に対して、最大限の協力を行なうべきです。

実際に、破産管財人が破産手続開始の際に提出した書類に関して、補充の調査や説明だったり、追加の資料の提出を求めること、記載されていない事実についても、調査や説明だったり、追加の資料の提出依頼をすることはよくあります。

そのためには、申立人としては、破産手続開始申立書の添付書類及び疎明資料だけでなく、その他の資料もきちんと保管することができるように整理し、必要に応じて速やかに破産管財人に引き継ぐことができるようにしておくことが重要です。

保管の必要性及びその整理については、法人代表者などの申立人自身で勝手に判断し、廃棄するのではなく、必ず申立代理人にその指示をあおいでください。

保管の要否については、申立代理人がもし破産管財人になったとしたら、どのような資料やデータが引き継がるのがよいのかなどの必要性を考えて伝えることになるでしょう。

その結果、重要なものについては、申立代理人が申立人から書類等を預かり保管するということもあります。

なお、破産手続が開始した場合には、手続をする前後関係なく、債権者を害する目的で、債務者の業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅した者は、債務者について破産手続開始の決定が確定したときは、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられ、またはこれを併科される。とされています。

そのため、法人の代表者としては、少なくとも帳簿等の会社財産に関する重要な書類については廃棄しないようにしてください。

よくあるのが、破産犯罪には該当しないようなケースであっても、法人の代表者が、事業を廃止しているため今後利用することはないだろうとの思い込みで、過去の帳簿類や各種資料・データ等を廃棄してしまっているという事例です。

帳簿類の廃棄をすることで、債権者に被害を与える目的などなかったとしても、法人の代表者等は、破産管財人から証拠隠滅を疑われたり、破産犯罪に問われるなどして手続が煩雑になる可能性があるので注意してください。

まとめ

具体的にどのような資料を保管しておくべきか、廃棄してもよいかについては、ケースバイケースで異なります。

そのため、破産を検討されている法人代表者の方は、破産手続について詳しい弁護士にお早目に相談されることをおすすめします。